こんにちは、アーチビブログです。
突然ですが、「日産 ブルーバード シルフィー」という車をご存じでしょうか?
平成12年(2000年)に発売されたシルフィー初期型は「超クリーンな排気ガス」が売りで、1800cc・2WD車の排出ガス性能は当時のガソリン車の中で突出して高く、NOxなどの排出量は、当時の規制75%低減レベルの半分の値で、都市部で走行した場合の排出ガスは周りの空気よりもキレイであり、「シルフィーで走ると都会の空気が浄化される」と言われた車です。
そんな「空気清浄機のような車」の登場から19年を経た現在ならば更なる技術の進歩で排出ガス浄化性能は大幅向上のはずが、そうでもないのが二輪車の現状だったりして・・・。
ムムッ!
というわけで、今回はオートバイの排出ガスについてのお話しです。
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目次
1、排気ガスで喉が痛くなるキャブ仕様車
バイクに乗れない日々が続くと、たまにはエンジンを回してやろうと車庫内で暖機運転をするのですが(もちろんシャッターは開けております)、私の場合、ほんの数年前までは、エンジン始動後20秒以内に車庫の外に出なければ苦しくなる(特に喉が痛くなる)のが暖機運転の当たり前でした。
当時の所有車である ゼファー1100 は空冷エンジン・キャブレター車。
同時期に所有していた GSX250FX は水冷エンジン・キャブレター車でした。
どちらもエンジンは好調で二輪初の規制を通過した車両ですが、キャブレター仕様車にクリーンな排気を求めるのは難しいです。
2、インジェクションで改善された排気ガス
そして、現在所有の ニンジャ1000 と トリシティ125 (どちらもインジェクション仕様)は、多少の臭いはしますが全く喉や目が痛くならないんだから正に技術の進歩ですよね。
これは、キャブレターとインジェクションの違いだけではなくて、キャタライザー(触媒)の性能向上も著しいのだと思います。
四輪の日本最初の規制は1966年の「ガソリンを燃料とする普通自動車及び小型自動車の一酸化炭素濃度規制」ですが、二輪の場合、1998年からなので四輪と比較して排出ガス規制のスタートは相当遅れていたんですね。
その分、一気に排出ガス浄化性能をアップさせて来た訳で、そのあおりから多くの名車が消滅の憂き目を見ることになったというのは、バイク好きとしては勿体ないことだと思います。
3、バイクの排出ガス規制の歴史
そんな二輪の排出ガス規制の流れを調べてみました。
(1)規制される有害物質
排出ガス規制で測定される物質は、以下の三項目ですが、どれも恐ろしい有毒ガスです。
<CO(一酸化炭素)>
人体に有毒な気体で、毒性がとても強く、少し吸い込んだだけでも頭痛・吐き気がし、最悪の場合は死に至る危険性があります。
<HC(炭化水素)>
紫外線に当たると有毒な光化学スモッグに変化し、蒸気を吸引したり液体を経口摂取する事で中毒症状が発生します。
<NOx(窒素酸化物)>
オゾン層を破壊すると言われています。発がん性も非常に高いそうです。
(2)排出ガス規制値の歴史
単位は「g/km」で、1km走行における排出量を「g」で表したもののようですが、難しい事は抜きにして、数値だけを見てもその厳しさが分かるので表にしてみました。
特に、1998年から2006年への変更は、一気に7割以上の削減を要求されている訳で、多くの車種が消えざるを得なかった理由なんだと思います。
下表は4サイクルエンジンの規制値です。
1998年 | 2006年 | 2012年 | 2016年 | 2020年 | |
---|---|---|---|---|---|
CO値 | 13.00 | 2.00 | 2.62 | 1.14 | 1.00 |
HC値 | 2.00 | 0.30 | 0.27 | 0.17 | 0.10 |
Nox値 | 0.30 | 0.15 | 0.21 | 0.09 | 0.06 |
※ 2016年に限り、クラス分けがあり、3段階に分かれているので、一番厳しい「クラス3」の数値を載せております。
<2016年のクラス分けの内訳>
【クラス1(アーバンクラス)】
50cc~150ccかつ最高速度100km/h未満
【クラス2(ルーラルクラス)】
150cc未満かつ最高速度130km/h未満もしくは150cc以上かつ最高速度130km/h未満
【クラス3(モーターウェイクラス)】
最高速度130km/h以上
下表は、2016年のクラス別規制値と、1998年の2サイクル規制値を載せております。
2016年 | クラス1 | クラス2 | クラス3 | 1998年 2サイクル規制値 |
---|---|---|---|---|
CO値 | 1.14 | 1.14 | 1.14 | 8.00 |
HC値 | 0.30 | 0.20 | 0.17 | 3.00 |
Nox値 | 0.21 | 0.17 | 0.09 | 0.10 |
4、消えて行った名車達
1980年代のバイクブームでは星の数ほどあった各社のバイクが、規制が強化される毎に次々と生産終了となってるんですよね。
(1)1998年規制
二輪車初の排出ガス規制が設けられた1998年は、カン高い排気音を響かせ白煙を吐く2サイクルバイクでは越えられない規制値となり、全ての2サイクルバイクが消滅しました。
レーサーレプリカブームを牽引した「ホンダNSR250」や、ヤマハRZの末裔「R1Z」等です。
(2)2006年規制
1998年規制から更に7割以上の削減を求められた2006年規制では、測定方法も「暖気測定(エンジン暖気後の測定)」から「冷機測定(エンジンが冷えた状態での測定)」に変わり、対応できない「空冷エンジン+キャブレター仕様」のバイクが消滅しました。
「カワサキW800」や「ヤマハSR400」はインジェクション採用で蘇ったので、カワサキ空冷4気筒も蘇らないですかね?
(3)2012年・2016年規制
2012年規制は、WMTCという国際基準に従う事になり、2006年規制よりも少し緩んだので、規制による消滅モデルはありません。
そして2016年は、2012年の約半分の規制値となり「EURO4」と呼ばれる規制です。
この規制で、長年愛され続けた「ホンダ モンキー」が消滅したんですよね。
EURO4には「OBD(車載式故障診断装置)」の装備義務化もプラスされたので、モンキーのような超小型車両では触媒設置個所の制約やOBD装備を含めた金銭面での折り合いがつかなかったのかもしれませんね。
(4)2020年規制
無理難題と思える課題をクリアしてきたメーカーの技術力は素晴らしいですよね。そして、2020年規制の「EURO5」ではどうなるのか?
触媒技術の向上で排気ガス浄化への対応は進んでいると思いますが、様々な電子装置の装備義務化は価格高騰につながるわけで、消滅する機種があるかもしれません。
言えるのは、冒頭で述べた「空気清浄機のようなエンジン」に限りなく近づくことは確かではないでしょうか?
私のところは田舎だから空気は澄みきってるんですけどね!
それではまたっ♪
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