危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪の違いと曖昧さを正す検討

交通関連の気になったニュースを稀に取り上げるアーチビブログです。

今回は、道路交通法が改正されそうな交通死亡事故の判決が下されたので取り上げさせていただきます。

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事故の内容

事故は、202129日午後11時頃、大分市の片側車線道路で発生しました。

乗用車で直進していた少年(当時19歳)は、法定速度60キロの道路を時速194キロで走行し、交差点で右折しようとした対向車に衝突。


(ニュース画像より)

対向車は約90メートル飛ばされ、運転していた小柳さん(当時50歳)が死亡、少年は重症を負いました。

衝突した両車は大破し、小柳さんの車両はルーフがめくれあがるほどの衝撃でシートベルトが切断されて車外に放出され、約2時間半後に出血性ショックで死亡しました。


(遺族提供された被害車両 ニュース画像より)

大分地検は当初、被告を「過失運転致死罪」で在宅起訴しましたが、その後、遺族が刑罰の重い「危険運転致死罪」の適用を求め、万人を超える署名を集めて地検に提出していました。

今回の裁判員裁判の争点は、法定速度の倍を超える速度での死亡事故が「危険運転に当るのかどうか」でした。

危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪の違い

危険運転と過失運転の違いは、故意なのか不注意なのかという運転行為の故意の有無です。

  危険運転致死傷罪 過失運転致死傷罪
運転行為 故意がある事故 不注意による事故
刑罰 年以上20年以下の懲役 年以上の懲役もしくは禁固
または100万円以下の罰金

危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪は、飲酒や薬物使用また速度超過などによって死傷事故を起こした場合に適用され、運転が危険だと認識していて故意があった場合に成立します。

飲酒や薬物使用の影響で通常の運転操作が出来ない状態だと分かっていたのにあえて運転した場合は故意であると判断されますが問題点も多いです。

例えば、飲酒量による身体への影響には個人差があり、また速度超過による車の制御能力にも個人差があるので「飲酒状態や高速度域で車の制御が可能かどうか」の『故意』の判断が難しいんです。

過失運転致死傷罪

過失運転致死傷罪は、運転する上で必要な注意を怠り人を死傷させた場合に適用されます。

不注意による事故で、「危険運転致死傷罪が適用されるほど酷くはない場合」という曖昧さがあります。

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裁判の争点

こういった裁判は被害者遺族の感情が重視されるので検察側は重い罪を求め、弁護側は罪が軽くなることを求めます。

検察側の主張

検察側は、危険運転の根拠となる「制御困難な高速度」について、「路面状況により車体が大きく揺れる上、夜間は視野が狭くなり運転操作を誤るおそれが高まる」「被告は現場を30回ほど走行していて、右折車が来た場合、相手に急な回避行動を取らせるしかないことを認識していた」と指摘し、懲役12年を求刑しましたが、当初は危険運転致死罪が認められず、過失運転致死罪の場合は懲役年を求めていました。

弁護側の主張

弁護側は、「車線から逸脱することはなく直進走行していて車を制御できていた」「自分も大怪我をしていて通行を妨害する目的はなかった」と過失運転致死罪の適用を訴えていました。

また、被告の車両は最高速度が時速250キロの高級外国車BMWなので、時速194キロの速度は危険にはあたらないという主張もありました。

意見を少々

BMW所有歴がある私の意見を少し言わせてください。

被告の車両は画像を見るに旧型のシリーズクーペだと思います。


(ニュース画像より)

BMWは、確かに走行安定性に優れていて高速度での運転は楽しいとは思いますが、今回の高年式ではないであろう車両が完璧な状態を保っていたのかどうかは分からないのだからBMWだから危険ではないというのはおかしな話です。

また、19歳という少年の運転技量で、夜間の一般道を時速200キロ近いスピードで走行することが危険には当たらないというのもおかしな話だと思います。

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判決

大分地裁は「危険運転致死罪」の成立を認め懲役年の実刑判決を言い渡しました。

判決理由で裁判長は、現場道路には補修が必要ない程度ではあるが凸凹があり、車体に対する道路幅にも余裕がなかったと指摘。

こうした道路に加え、高速度になるほど車体の揺れが大きくなり、事故時のような夜間は視野が狭くなることも考慮し、たとえ現場が直線道路でも「時速194キロで走行中にわずかな操作ミスがあれば事故が発生する事態が容易に想像できる」としました。

量刑理由では「常道を逸した高速度で危険極まりない」と指弾。

被告がマフラー音といった加速の高まりを楽しむために猛スピードを出していたことに対し「身勝手で自己中心的な意思決定は厳しい非難に値する」と述べました。

遺族の気持ち

被害者の遺族は、閉廷後に開いた記者会見で「危険運転は悪質な故意犯を罰するために作られた法律。当然なことが認められた」と評価されました。

危険運転致死罪が認められたとはいえ、刑罰の上限が懲役20年のところを懲役年の判決というのは遺族の感情を思えば軽い刑罰と言わざるを得ません。
 
右折車と直進車が接触する「右直事故」の場合、通常ならば右折車に注意義務があるので、そのあたりも考慮されたのかもしれませんが、相手が時速200キロ近いスピードで迫ってくるなんて誰しも想像できないんです。
 

高速度や飲酒処罰の検討会

 
自動車運転処罰法が規定する危険運転致死傷罪の要件の在り方を議論する有識者検討会が、高速度と飲酒の数値基準の設定などを盛り込んだ報告書をまとめました。
 
高速度の要件を「進行の制御が困難」、飲酒を「正常な運転が困難」とする現行法は、規定が曖昧との批判があり、悪質な運転でも法定上の上限が懲役20年の「危険運転」ではなく、上限7年の「過失運転」で立件されるケースがあり、遺族らが見直しを求めていました。
 
速度に関して具体的な数値は示されませんでしたが「速度制限の1.5倍や2倍」との委員の意見が紹介されました。
 
報告書は、高速度について現行法の規定とは別に「交通の状況などにかかわらず危険性が認められる数値基準を規定する事が考えられる」と指摘され、飲酒についても個人差や心身の状況にかかわらず、一律に「正常な運転が困難」といえる数値基準の設定が促されました。

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まとめ

 
最近は電動キックボード使用者の知識不足による無免許運転や、悪質な自転車の飲酒運転で自動車免許証の点数が引かれる事例など、今回の判決も含めて、道路交通法にはまだまだ改正されるべき余地が見られます。
 
道路交通法はどんどん厳しくなり、私も多少のスピード超過に関しては自信が持てない面もありますが、要は常識のある運転を心がけていれば法律に抵触することはないと肝に銘じたいと思います。
 
それではまたっ!
 
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