あなたは、新車を購入した時、慣らし運転をやっていますか?
慣らし運転は必要なし!
と言われるようになって久しいですが私は必ず行います。
では、何故必要なくなったのか?
なぜ未だに慣らし運転を実行する人がいるのか?
って、気になりませんか?
それを説明しようじゃありませんか!(笑)
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目次
【1】工作機械と工作精度
工業製品の工作精度って、昔と現在では全く違うのですが、例えば下の画像。
HONDA の「N360(1967年)」と「N-ONE(2000年)」を比べれば一目瞭然です。
N-ONEがN360をオマージュしてデザインされていることがよく分かりますが、ボディ・エンジン・サスペンション・タイヤ・塗料・材質・防錆処理・etc。
全ての精度と品質が向上しております。
パーツを作り出す機械の性能は産業発達と共に向上して来ましたが、日本の製品が大きく変わったのは1970年代以降で、NC工作機械の導入後からなんです。
NCは「Numerically(数値的) Control(制御)」の略称です。
つまり数値的な制御装置が備わっている工作機械のことです。
NC工作機械導入以前は、修練を積んだ熟練工に頼ることが多く、品質にムラが生まれていたんですね。
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【2】エンジンの過去と現在
下のイラストは、過去に書いた「空冷エンジンと水冷エンジンの違い」ですが、ピストンとシリンダーのクリアランス(すき間)が違いますよね。
空冷・水冷に限らず、加工技術が低かった昔のエンジンは、このクリアランスが大きかったんですよね。
(1)クリアランス
このすき間をピストンリングで埋め、ピストンリングとシリンダーとの干渉をエンジンオイルで防ぐ(またはピストンリングとシリンダー間の隙間をオイルで埋める)わけですが、すき間が大きければ、ピストンリングは広がるチカラが強い材質が必要で、シリンダーに押し付けるチカラが強いということは摩耗が少ない硬い材質が必要でした。
硬く強いピストンリングは、オイル交換を怠るとエンジンを傷つける確率が高まります。
昔のエンジンの精度が100分の4だとしたら現在の精度は100分の1まで向上し、ピストンとシリンダー間のクリアランスが限りなく狭くなり、オイルの質も向上したことでピストンリングの広がるチカラを弱めて柔らかくすることが可能となり、エンジンを傷つけることが少なくなりました。
(2)エンジンの当たり外れ
工作技術が低かった時代は、パーツ精度が均一ではなく、また、エンジンやボディの組み立ても均一ではなかったわけで、生産される量産車の中に、妙にパワーが出ている車両とか、妙に燃費が良い車両は「当たり!」、その逆で平均値よりパワーが無かったり燃費が悪いと「外れ!」なんて言われておりました。
当たりか?外れか?平均的車両か?
納車されてみないと分からない時代があったんです。
古き良き時代です!
ちなみに、ホンダのエンジンは昔から精度が高く、二輪やF1参戦で培った技術が「エンジンのホンダ」と称される所以だったのではないでしょうか。
【3】慣らし運転とは
金属を加工すると、バリと呼ばれるヒゲのような金属カスができます。
例えば下画像のような感じですね。
上の例は極端ですが、昔の金属部品にはバリが残ることが多かったんです。
なので、新車時は低回転で走行しジンワリとエンジン内部の余分なバリを取り去ったり、組まれたばかりの様々なパーツを馴染ませつつ、徐々に回転数を上げて行く行為が必要で、それが慣らし運転なんですね。
という訳で、精度が低い昔のエンジンは、組み上がり後いきなり回転を上げると不具合が生じたり壊れてしまうこともあり慣らし運転が必要でしたが、工作精度・組み立て精度・オイル品質などが向上した現在は慣らし運転は不要と言われております。
ただね、現在でも組み上がったばかりのエンジンには金属の粉などが入っているので、最初の1000km程度は回転数を抑えた運転をして、初回のオイル交換は早めにして金属粉を取り除く方が快調なエンジンに仕上がるわけで、昔ほどシビアでなくても良いけれど慣らし運転は必要であると言えます。
これはサスペンションなども同様で、最初から高負荷を掛けないで徐々に慣らして馴染ませる方が良いですからね。
少し話は逸れますが、1988年頃に「トヨタ スープラ(A70型)」を購入した知人の車両は、納車日が真夏の炎天下だったのでボディ塗料が液ダレしていたことがありました。
(トヨタ スープラ A70型)
なので、一昔前までは塗料が固まるまでは(納車後1ヶ月くらい)、新車のワックス掛けはしない方が良いと言われていたのも、塗装を含めた慣らしの範疇かもしれませんね。
慣らし運転が必要なのはエンジンだけではないんですね!
【4】慣らし運転の仕方でエンジンの性格が変わります
現在の自動車の取扱説明書には「慣らし運転」の項目は無いと思いますが、現在でもバイクには有るんです。
私が所有している「Kawasaki Ninja1000(2018年式)」の場合。
「最初の1600kmを走行するまでは下表のエンジン回転速度以下で慣らし運転をしてください。慣らし運転を行うと車の寿命を延ばします。」
と明確に表記されています。
走行距離 | エンジン回転速度 |
---|---|
0 ~ 800km | 4000rpm |
800 ~ 1600km | 6000rpm |
最高出力発生回転が10,000回転の車両だから、800kmまでは4割。800kmから6割。1600kmから 全開 OK!と、分かりやすいですね。
また「YAMAHA トリシティ125(2015年式)」の取扱説明書にも。
「車を長持ちさせるために、慣らし運転を行ってください。乗り始めてから約1ヶ月間(または1000km走行まで)は、不要な空ぶかしや急加速、急減速はしないでください。」
と記載されています。
四輪よりも遥かに高回転エンジンのバイクの場合、慣らし運転の必要性が謳われているわけで、こういうのを見ると、四輪もやった方が良い気がしますよね。
(1)エンジンにアタリをつける
組み上がったばかりのエンジンは、金属同士が触れ合うナイーブな状態です。
動かすことで干渉部が削れて徐々に最適な状態になって行きます。
その過程を経てスムーズに動けるようになった状態を「アタリがつく」なんて言います。
ちなみに、妻の実家の「ダイハツ キャンバス(2019年式)」は、信じられないほど走りません!(笑)
ノンターボとはいえDOHCエンジンなのに、驚くほど高回転まで回りません!(苦笑)
これはね、義母の運転が全てにおいてスローだったのが原因です。
つまり、新車時からずっとエンジン回転を抑えた慣らし運転をしているようなもので、高回転まで回らない!というアタリがついてしまったということです。
なので!
低回転&低走行だけが慣らし運転ではないんです!
例えば、最高出力発生回転数が7000回転のエンジンで、4000回転程度までしか回さないでいると、7000回転領域の可動部や摺動部(しゅうどうぶ=軸と軸受部のように擦れながら滑り合う部分)の慣らしが終わらないんです。
ということは、慣らし運転の最後の行程で高回転部の慣らしとして、エンジンに高い負荷を一定時間掛ける必要があるということです。
「現在の車は普通の走行をしていれば慣らし運転は終了するから慣らし運転は必要ない!」というのはあながち間違いではないのですが、前述した義母のキャンバスのように高回転まで回らないエンジンに仕上がることもあるので、同じやるならエンジンの持つ能力を最大限の状態に仕上げる慣らし運転は必要であると言えます。
高回転高負荷の慣らしは高速道路や専用道が適しています☆
(2)慣らし運転の距離とエンジン回転数
例えば、「2000km走行するまでは、エンジン回転は3000回転以下に抑える!」なんて言われることもありますが、私はそこまで我慢ができません!(笑)
特に、軽自動車や小排気量バイクなどは回転を抑え過ぎると交通の流れに乗れなくて迷惑ですからね。
トリシティ125の時は、500km走行時点で我慢ができなくなりフルスロットルを呉れて遣りました!(爆)
昔ほどシビアにやる必要はないわけで、一般的な四輪の場合は下表を意識して、普通に走行することで十分だと思います。
走行距離 | エンジン回転数 | 心がけ |
---|---|---|
0 ~ 300km | なるべく回さない | 優しい運転 |
300 ~ 700km | 3000rpm | 急を避けた通常運転 |
700 ~ 1000km | 3500rpm | 急を避けた通常運転 |
1000 ~ 1500km | 4000rpm | 徐々に負荷を掛ける |
1500 ~ 2000km | 5000rpm | 徐々に負荷を掛ける |
2000km ~ | レッドゾーン以下 | 高負荷を一定時間掛ける |
【5】オイル交換について
エンジン内の粉や塵はオイルフィルターに溜まります。
昔は、新車納車後1ヵ月点検(または1000km点検)時に、オイル&オイルフィルター交換をしていましたが、近年は6ヵ月点検(または5000km)まではオイル交換の必要はないというディーラーが増えました。
それだけ粉や塵が出なくなったということですが、気になる方は1000km時にオイルとフィルターを交換するのもありだと思います。
私の場合ですが、現在慣らし運転中の「HONDA N-BOX」は、6ヵ月点検時に初回のオイル&フィルター交換をする予定です。
長年染みついている感覚で言えば1000km時に交換したいという思いもありますが、メーカー推奨が6ヶ月ならば従おうというのと、6ヶ月経過時は、たぶん3000kmほどしか走行していないだろうから程良い距離数だと思うからでございます。
バイクの場合は1ヵ月点検時に1000kmになるように走行して交換しましたが、高回転を多用するバイクと、高回転を多用しない四輪の違いがありますからね。
そのへんは、オーナーさんの好みに応じて!ということになりますよね。
【6】まとめ
長々と慣らし運転の必要性を述べてまいりましたが、最初の3000km程度までが肝心で、普通に運転して、たまにエンジンにカツを入れてやればいい!だけのお話です。(笑)
近年の乗り物はそれでいいんです!
でもね、昔ながらの気を遣いながら徐々に徐々に馴染ませる方法って、その車両が自分の好みに育って行く感じがして結構楽しいんですよねっ♪
新車や新古車、低走行車を手に入れた方は慣らし運転を楽しんでみてくださいませ♪
それではまたっ♪
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