こんにちは、アーチビブログです。
最近のオートバイは、ほとんどが水冷エンジンなのですが、中には頑なに空冷エンジンを守り続けている車種も存在します。
「頑な(かたくな)」と言っても、頑固とか不体裁なさまという意味ではなく、古き良き機構を守り続けてくれている良い意味での「頑な」とご解釈くださいね。
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1、空冷と水冷 最高出力の違い
2020年頃の国産空冷エンジンで代表的な車種を挙げれば「HONDA CB1100」「Kawasaki W800」「YAMAHA SR400」といったところでしょうか。
下の表は各車の初期モデルと最新モデルの簡単なエンジン諸元になります。
車名 | 排気量 | 年式 | 最高出力 | 最大トルク |
---|---|---|---|---|
CB1100 | 1140cc | 2010 | 88ps/7500rpm | 9.4kgf・m/5000rpm |
2019 | 90ps/7500rpm | 9.3kgf・m/5500rpm | ||
W650 | 675cc | 2008 | 48ps/6500rpm | 5.5kgf・m/5000rpm |
W800 | 773cc | 2011 | 48ps/6500rpm | 6.3kgf・m/2500rpm |
2020 | 52ps/6500rpm | 6.3kgf・m/4800rpm | ||
SR400 | 399cc | 1978 | 27ps/7000rpm | 3.0kgf・m/6500rpm |
2019 | 24ps/6500rpm | 2.9kgf・m/3000rpm |
現在のエンジン技術で水冷エンジンの場合、SS(スーパースポーツ)系のハイパワーモデルはリッター当たり200馬力(1000ccで200馬力)が普通になっていますが、空冷エンジンの場合はリッター100馬力に満たないのが普通です。
厳しい排気ガス規制や騒音規制をクリアするためにパワーダウンも仕方なしなのでしょうが、Wシリーズは675ccから773ccに排気量を上げることで対処しているのが分かります。
つまり、現代の空冷エンジンはハイパワーを追い求めたものではなく、味わいを求めたものと言えますよね。
2、空冷と水冷 レスポンスの違い
スロットルを開けた瞬間に「ギュンッ!」と加速し、レスポンスが良すぎて緊張感も伴う水冷エンジンに比べ、スロットルを開けた時に一呼吸遅れるのが空冷エンジンです。
この「ジワッ!」と加速する感覚が安心感や味わい深さに繋がるんですよね。
ちなみに、耐久性も兼ねた市販空冷エンジンでハイパワーを求めたのは、カワサキ空冷Zシリーズで最もハイパフォーマンスと言われる「GPz1100」です。
世界最高水準のパフォーマンスを求めたカワサキが水冷エンジンを開発し「GPZ900R Ninja」を発表した同時期に市販されていた空冷Zです。
車名 | 排気量 | 年式 | 最高出力 | 最大トルク | 乾燥重量 | 最高速度 |
---|---|---|---|---|---|---|
GPz1100 (空冷) | 1089cc | 1983 | 120ps/8750rpm | 10.2kgf.m/8000rpm | 244kg | 240km/h |
GPZ900R Ninja |
908cc | 1984 | 110ps/9500rpm | 8.7kgf.m/8500rpm | 228kg | 250km/h |
1983年の GPz1100 が 1089cc で 120馬力。
2019年の CB1100 が 1140cc で 90馬力。
この数値を見ても空冷エンジンで厳しい排気ガス規制・騒音規制をクリアするためのパワーダウンが見て取れます。
また、GPZ900R は 908cc で 110馬力 です。
軽い車体と空力に優れた車体。高速域でも熱ダレが少ない水冷ということもあり最高速度はGPz1100を上回っております。
3、空冷と水冷 何が違う?
では、空冷エンジンと水冷エンジンは何が違うのでしょう?
走行風を当てる表面積を広げて放熱効果を高めるために突起状のフィンがあるのが空冷エンジンの特徴で、フィンが無いのが水冷エンジンという見た目も違いますが、凄く簡単に言えば、空冷と水冷は、ピストンとシリンダーの隙間(クリアランス)が違うんですね。
空冷は走行風でエンジンを冷やすだけなのでエンジン温度が高くなります。
ピストンやシリンダーの金属は熱で膨張する性質を持っているので膨張して隙間がキチキチになると焼き付く可能性もあります。
なので、一番キチキチになるクリアランスを前提にしてピストンとシリンダーの隙間を広く設定する必要があります。
対して、水冷はシリンダーに冷却水を通すウォータージャケットがあり冷却水を循環させることで強制的にエンジンを冷やすので金属膨張が少なく、ピストンとシリンダーのクリアランスを狭く設定できます。
キチキチって言い方、変ですかね? ピッタリかな?
4、空冷は何故パワーが出ない?
全開を想定したクリアランスではあるけれど、全開で走る事は稀なので、普段の走行中のピストンクリアランスは広めです。
ピストン・シリンダー間のクリアランスが広いと、燃焼室で爆発した排気ガスが隙間を通って下降しクランクケース側へ漏れます。この漏れた排気ガスをブローバイガスと言います。
昔は、ブローバイガスを大気解放していたのですが、それこそ、排出ガス規制の対象であるCO、HC、NOx の濃いヤツですので解放するわけにはいかず、現在は、ブローバイガスをクランクからエアクリーナーに戻し再燃焼させる還流方式になっています。
ピストン・シリンダークリアランスが大きいとレスポンスが緩くなり、ブローバイガス還流方式で吸気中の新しい空気の割合が減りパワーが出にくくなります。
これは、現在の空冷エンジンに当てはまります。
対して、ラジエーターとウォータージャケットで冷やせる水冷は、クリアランスが小さいのでレスポンスが鋭く、ブローバイガスも少ないので性能も落ちないしパワーも稼げるというわけですね。
ちなみに、私が所有していた GSX250FX は、水冷エンジン・キャブレター仕様でしたが、ゼファー1100 に慣れたアクセル操作をやると予想感覚以上に「ギュンッ!」と加速するので、特にコーナー出口のアクセルワークには気を遣っておりました。
それと、路面の段差などの揺れでスロットルを握った右手が動いてしまうことがあります。
レスポンスが鋭いと、その動いた右手でバイクがわずかに加速したり減速したりギクシャクするんですよね。250ccでも水冷エンジンのレスポンスは、空冷1100ccより気を遣う面があったというお話でした。
5、あなたはどちらを選びますか?
エンジンの外観は、私の世代は空冷フィンがある方が好きなのではないでしょうか。
ゼファー所有の頃は、大きく張り出したエンジンを磨くのが大好きな私でした。
「Kawasaki Z900RS」のように、水冷エンジンでも空冷っぽさを求めてフィンがデザインされている車種もあります。
ちなみに、下の画像は Ninja1000 のネイキッドである Z1000 の水冷エンジンです。
このエンジンを見ると、息子が子供の頃に見ていた「鋼の錬金術師」に登場する鉄仮面さんを連想してしまうのは私だけでしょうか?
ヤッパ似てるよ!
それはさておきまして!
例えば、ハーレーの空冷Vツインエンジンは美しいですよね。
同じVツインでも水冷のインディアンのエンジンは、フィンを持たないけれどカッコ良くデザインされていると思います。
好き嫌いが分かれるかもしれませんが!
空冷と水冷・・・。
ゼファー1100 と ニンジャ1000 での私の個人的な感覚ですが、ゼファーのレスポンスのユルさって、トラクションコントロールの役目を果たしていたと思うんですよ。
コーナー出口でスロットルを開けると、ジワッと加速が始まり直線になった辺りで1100ccのトルクが炸裂するって感じで、扱いやすくもあり、スロットルオープンが瞬時にリアタイヤに伝わらない分、ホイルスピンも起きなくてタイヤがシッカリと地面を掴む感じです。
対して、ニンジャはレスポンスが鋭いので、トラクションコントロールがオフだと緊張感が半端なくて疲れてしまいます。
なので、普段はトラクションを「モード2」にしているのですが、このモードでもぶっ飛び疾走りが可能です。(私なりのです)
私は、外観も、味わいのあるスロットルレスポンスも、空冷エンジンが好きです。
ですが、最近の水冷エンジン+電子制御も悪くないんですよねぇ~!
というわけで、空冷か?水冷か?は、どちらかと言えば空冷が好きだけど、水冷も好きという結論に至りました。
優柔不断っ!
合わせて読みたい「キャブレター車とインジェクション車 どちらが好き?」のページもありますので、よろしければ覗いてみてくださいね。
バイクって楽しいですよねっ♪
それではまたっ♪
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