新型N-BOXに搭載された i-VTEC と 電動ウェイストゲートとは

こんにちは、アーチビブログです。

軽自動車の販売台数で長い間ナンバー1の地位にいる「HONDA N-BOX」ですが、初代(JF1&JF2型)でも完成度が高いのに、2代目(JF3&JF4型)では、ボディの軽量化や安全機能だけではなく、エンジンも更なる進化(i-VTECの採用)を遂げております。

今回は、そのエンジンについて色々と考えてみました。

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1.DOHC VTEC

ホンダの伝家の宝刀「VTEC(ブイテック)」と言えば、今から30年以上前に遡りますが、2代目インテグラのCMで、マイケルフォックスが「カッコインテグラ」と叫び、「ディーオーエイチシー ブイテック!」とナレーションが流れていたのを思い出します。

それまでのNAエンジンの概念を吹き飛ばす超高性能エンジンとして、ホンダNSX などの高性能車に与えられたエンジンでした。

このエンジンを簡単に説明するのは難しいですが、単純に考えてみました。

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(1)バルブとカム

エンジンにはシリンダーに空気(混合気)を取り込む通路と、爆発後に排出する通路があり、その通路を塞ぐフタの役目をする部品がバルブで、バルブを押し下げる役目をする部品がカムです。

レシプロエンジン(ピストンの往復運動を回転運動として出力する原動機)には種類がありますが、上図の場合は、エンジンの上にカムが2つ装備されていることから、「DOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト)」または「ツインカム」と呼ばれます。

(2)ハイカムシャフト

エンジンはシリンダー内に取り込む空気が多ければ多いほどパワーを上げることができます。そこで、バルブを通常より更に押し下げてストローク量(リフト量)を増やせば、空気の吸入量を増やすことができます。

つまり、通常のカムよりカムの山を高くしてバルブをより深く押し下げるのがハイカムシャフト(通称ハイカム)です。

ならば、最初からハイカムでいいじゃんと思いますよね。

ところが、やみくもに吸入量を増やしても、低回転では十分に混合気が混ざらず、アイドリングが不安定になったり低速域ではスカスカでパワーが出ない(トルク不足)というデメリットが生まれます。

つまり、ハイカムは、レースカーなどの高回転域しか使わない競技車両向きであり、ストップゴーが多い一般車はローカム(山が低いカム)が適しているということになります。

あくまでも単純に言えばですよぉ~!

(3)ローカムハイカム

そこで、ホンダが考案したのが、低速域は通常のカムで、高速域はハイカムに切り替わる、可変バルブタイミングリフト機構 = VTEC Variable valve Timing and lift Electronic Control system)というわけです。

これ以上は、私の画力では説明できないのでホンダHPの画像を拝借したのが下図です。


HONDA HPより)

低速域は青いカムがロッカーアーム(バルブを作動させるパーツ)を押し、ある回転域で赤いカムに切り替わるという、考えれば単純ですが実現するとなると複雑困難な機構です。

NAエンジンでは、リッター7080馬力(2000ccエンジンならば140160馬力)が限界だった時代に、リッター100馬力をマークしたのが DOHC VTEC です。

余談ですが、2代目インテグラ発売当時、VTEC仕様を購入したけれど日常使用の5,000回転くらいまでしか回さないで使っていて、手放してからVTECの意味を知ったという先輩がいまして、車に興味がないってのはそういうことなんだなと学んだ私であります。

6,000回転以上が楽しいのにね!

2.N-BOX NA(自然吸気)エンジン

新型N-BOXのNAエンジンには軽自動車初の VTEC(吸気側バルブの可変バルブリフト機構) VTC  の 「i-VTEC」が搭載されました。

(1)VTCとは

吸気バルブの開閉タイミングを回転数により連続可変制御します。
吸気バルブと排気バルブが同時に開いているタイミングを大きくしたり、小さくしたり連続的に変化させる機構です。

(2)NAエンジンの諸元

これ、ちょっと面白いのは、リッター100馬力が可能なVTECを採用しているにも拘らず、パワートルク共、VTECを採用していない旧型のエンジンと同じ数値なんですよね。

NAエンジン 旧型(JF1) 新型(JF3)
エンジン型式 S07A S07B
内径×行程 64.0mm×68.2mm 60.0mm×77.6mm
圧縮比 11.8 12.0
最高出力 58ps/7,300rpm 58ps/7,300rpm
最大トルク 6.6kg・m/4,700rpm 6.6kg・m/4,800rpm
変速比CVT 3.6800.674 3.6800.674
最終減速比 4.894 4.318
燃料タンク容量 35リットル 27リットル

多大な開発費を掛けて設計されたエンジンのボア・ストローク(内径×行程)が変更されることは稀だと思いますが、旧型でもロングストロークであったストロークがが更にロング化されています。

ロングストロークにすることで、トルク(重いものを動かすチカラ)をアップし、高回転が苦手なロングストロークのデメリットをVTECで補うという感じでしょうか

(3)総合減速比

エンジンの回転数とタイヤの回転数の比率(変速比×最終減速比)を総合減速比といい、総合減速比は数値が大きくなるほどトルクが大きく速度は小さくなり、数値が小さくなるほどトルクは弱く速度は大きく燃費が良くなります。
(1速などのギアが小さい総合減速比は大きく、トップギアなどのギアが大きい総合減速比は小さくなります。)

CVTトップギアでの総合減速比の新旧比較が下表です。
新型は旧型よりも燃費を意識した減速比になっているのが分かります。

NA 変速比 最終減速比 総合減速比
旧型(JF1) 0.674 4.894 3.298556
新型(JF3) 0.674 4.318 2.910332

つまり、パワーを絞り出すためではなく、低速での力強さと高速での伸びやかさ、そして効率の良い燃料消費を高次元でバランスさせるためにVTEC機構を採用したのが HONDA 軽自動車 N系 のエンジンという結論に達したあーさんであります。

結構頭を使いました!(笑)

3.N-BOX ターボ(加給)エンジン

ターボエンジンは、十分なパワートルクがあるため VTEC のリフト機構は装備されておりませんが、VTC は装備されています。

(1)電動ウェイストゲート

こちらも軽自動車初となる、電動ウェイストゲートが搭載されました。

ターボエンジンは排気ガスの圧力を使って空気をシリンダーに押し込んでいますが、排気ガスの圧力が高すぎるとエンジンブローに繋がるので、高まり過ぎた圧を逃がす装置がウェイストゲートです。

そこを電動化し圧力制御することでレスポンスが向上し、パワーと低燃費の両立に貢献するというわけです。

(2)ターボエンジンの諸元

ターボエンジンの新旧諸元も比較してみました。

TURBOエンジン 旧型(JF1) 新型(JF3)
エンジン型式 S07A S07B
内径×行程 64.0mm×68.2mm 60.0mm×77.6mm
圧縮比 9.2 9.8
最高出力 64ps/6,000rpm 64ps/6,000rpm
最大トルク 10.6kg・m/2,600rpm 10.6kg・m/2,600rpm
変速比CVT 3.1520.577 3.1520.577
最終減速比 4.894 4.619
燃料タンク容量 35リットル 27リットル

パワートルク発生回転数の全てが旧型と同じです。

ロングストローク化され圧縮比が高められていて同じ回転数ならば、通常はパワートルクがアップすると思うのですが、「軽自動車自主規制」があるから、仮に実馬力が60馬力でも70馬力でも、64馬力と表示するしかないってことですかね(笑)

(3)総合減速比

ターボエンジンはトルクがある分、変速比のオーバートップをNAよりもハイギア化できます。
結果、新型ターボの総合減速比は更に低く、旧型よりも低燃費と予想ができます。

TURBO 変速比 最終減速比 総合減速比
旧型(JF1) 0.577 4.894 2.823838
新型(JF3) 0.577 4.619 2.665163


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4.まとめ

軽自動車の自主規制馬力って64馬力ですよね。
排気量が660ccなので、単純にリッター100馬力の出力だと66馬力になります。

リッター100馬力って、VTEC技術でもターボ技術でも簡単にクリアできる数値なのに、NAで58馬力、ターボで64馬力という細かい設定をせねばならずってのが歯がゆいですよね。

車両が軽いバイクの場合はリッター200馬力超えの車両も多いですからね

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N-BOXのようなスーパーハイトワゴン系はどうしても車両重量が大きくなるからトルク重視のターボモデルが適していると思いますが、N-ONEとかS660などは、NA VTECで100馬力くらいの面白モデルがあってもいいような気がする今日この頃でございます。

以上、田舎のオジサンの勝手な解釈入りのエンジン考察でした

 それではまたっ♪

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