2019年4月の東京池袋の乗用車暴走事故で、運転していた旧通産省工業技術院元院長(88歳)が、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑で書類送検されました。
高齢者の操作ミスについて、新聞に気になる記事が載っていたので紹介したいと思います。
Sponsored Link
1、行動の省略とは
「操作ミス 高齢者に多発 専門家は『行動の省略』を指摘」という記事からの引用です。
警視庁の分析では、2015年~17年の死亡事故で踏み間違いが原因だったのは70歳未満では全体の0.5%だが、75~79歳は5.1%、80歳以上は7.6%と高齢になるほど上昇しているとのこと。
交通心理学の教授によると、高齢者は前頭葉の機能の衰えから自分の行動をコントロールする能力が落ち、連続した行動を取る際に順序を守れない事がある。
視認範囲も狭くなり、急に見落としに気付いて驚いたり、気になるものへ過剰な注意を向けたりしてしまうことも。
このような状態では「急停止しなければ」と考えても、ブレーキペダルに足を移さず、アクセルを踏み込んでしまう「行動の省略」が起こりやすくなる。
つまり、「連続した行動を取る際に順序を守れなくて、頭で考えた事を行動に移せない『行動の省略をしてしまう』という高齢者特有の操作ミスがある。」という事ですよね。
何が恐ろしいかって、「ブレーキを踏まなければ」と頭で考えたとして、省略される行動部分は「アクセルペダルからブレーキペダルへ足を移す」というところで、「踏む」と考えたところは省略されないで、結果「アクセルペダルを強く踏む」という行為が残る事です。
更に、警視庁分析の踏み間違いが原因のパーセンテージについて、70歳未満とそれ以上のパーセンテージは明らかに違います。この大幅に違うと言っても間違いではない数値が「行動の省略行為」になるとしたら、恐ろしいことだと思います。
これを踏まえて、池袋事故を振り返ってみます。
2、池袋事故
警視庁によると、車は事故現場から約200メートル前の左カーブで前のバイクや車を追い抜く際に急加速を始め、縁石にも接触しながら時速90キロ台後半で横断歩道に突入し母子をはねました。
ドライブレコーダーにはエンジンがうなりを上げる音が記録され、ブレーキランプ点灯の目撃者もなく、警視庁はアクセルを踏み続けたと断定しました。
当初は「ブレーキが利かなかった」と話し、その後は「パニック状態になりブレーキとアクセルを踏み間違えた可能性もある」と説明されています。
(時事通信フォトより)
捜査の過程で、片脚が悪い上に、手足の震えや筋肉のこわばりが起きる「パーキンソン症候群」に罹患(りかん)していてた疑いも判明していて、医師から「運転は許可できない」と伝えられていたとのこと。
約7ヵ月に及ぶ捜査で、車の機能に異常はなく、アクセルとブレーキの踏み間違えが原因と断定され、起訴を求める「厳重処分」の意見も付けられました。書類送検容疑は、赤信号を無視して横断歩道に突っ込み、自転車に乗っていた母子(31歳と3歳)を死亡させ、同乗の妻を含め2歳~90代の男女9人に重軽傷を負わせた疑いです。
3、まとめ
「ドライブレコーダーにエンジンがうなりを上げる音が記録されていた」というところが気になりますよね。
通常、アクセルは「ジワッ」っと踏むものですが、急ブレーキは「ガツンッ」と踏みます。
エンジンがうなりを上げるほどの踏み方というのは、おそらく「ガツンッ」と踏んだ状態なのではないでしょうか?
「パーキンソン症候群罹患の疑い」ということですが、アクセルを強く踏めたのは、パーキンソン症候群の症状の一つの「筋肉がこわばる(筋固縮)」には当てはまらないと思うので、「行動の省略」という行為になるのだと思います。
遺族の方の記者会見での気丈な振る舞いには胸が痛くなりました。辛い気持ちを押し殺して語られている事がよく分かります。
政府は、衝突の可能性がある車を止める「自動ブレーキ」の搭載義務付けや、高齢者の運転を急加速防止機能などが付いた車種に絞る「限定免許制度」の創設を検討しているそうですが、旧車から新車まで様々な年式の車が登録されている現在に「自動ブレーキ搭載義務」は難しいと思います。
でも、防止機能付き車種限定で運転を許される「限定免許制度」は早急に実現できる可能性があります。
池袋事故後に、運転免許の自主返納が急増し、都内では10月末までに1年間の過去最多を更新し、うち約8割が70歳以上だったとのことですが、公共交通機関が少ない田舎では、そう簡単に免許を返納できない事情があります。「限定免許制度」の一刻も早い実現を望みます。
Sponsored Link